伝説
1997年8月6日の午後4時20分頃、メキシコの首都メキシコシティ上空に巨大なUFOが出現した。専門家や目撃者らによると、UFOは直径10メートルから30メートルほどの大きさがあり、ビルの間を縫うように飛行したあと、忽然と姿を消してしまったという。
この事件ではビデオという証拠に加え、複数の目撃者もいる。そのため宇宙人が操縦する空飛ぶ円盤の実在は間違いないと言われている。(以下、謎解きに続く)
謎解き
このビデオは、かつてUFOを扱う番組などでUFO映像を流す際、必ずといっていいほど紹介されていた有名なものだ。
しかし有名であればそれだけ詳細に検証されるもので、このビデオもアメリカのUFO研究団体「MUFON」の映像解析専門家、ジェフリイ・セイニオによって解析されている。
見つかった3つの問題点
セイニオがビデオを詳細に解析した結果、次の3つの問題点が見つかった。
【問題点1】
カメラが手ブレによって揺れる際、映っているビルの縁や窓などの映像には乱れが生じるのに対し、UFOの映像だけは鮮明に映っている。これはUFOの映像(おそらく糸で吊った模型を別撮りしたもの)だけ後から加えられたことを示している。
【問題点2】
カメラが手ブレで上下に弾むと、UFOだけは周囲のビルより少し余計に弾む。
セイニオによると、「これは飛んでいる飛行機をビデオ撮影中、手ブレを起こしたらその飛行機が墜落してしまうようなものだ。とんでもないことだが、このビデオは同じ効果を示している」という。(別撮りゆえの失敗か)
【問題点3】
UFOがビルの上にある2番目の吹流しを通り過ぎるとき、カメラは1.6度回転するのに対し、UFOはまったく回転しない。
以上、3つの問題点により、このUFO映像は偽物である可能性が高いという。これらの問題点が生じた原因については、セイニオは次のように述べている。
このビデオを作った人物が問題自体を把握していなかったか、知っていてもそれを修正するのに膨大な時間がかかるので、“残業”はしないことにしたのだろう。
なお目撃情報については、1ヶ月以上経ってから報告された目立ちたがりのものばかりで、いずれも信憑性はかなり低いとみられている。
そもそもあれだけ大きなUFOが白昼堂々、大都市の上空に出現したのだとしたら、ビデオが出てくるまでまったく話題にならなかったこと自体おかしな話ではある。
【参考資料】
- 矢追純一『宇宙人は本当に実在する』(河出書房新社)
- 『MUFON UFO JOURNAL』 (October. 1998)
- 「超常現象調査隊」 (ディスカバリー・チャンネル)